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この世の中でもっともたいせつで、実はなにより評価される精神を身に着けている。その真っ当な精神を尊ぶことができる組織や業界こそが、殺伐とした世界で結果的に勝利し、生き残る。
広島カープには、胸を張って世界に誇れるある若手投手がいます。
背番号14・大瀬良大地。
“炎のストッパー”として獅子奮迅の活躍を続けながら、病に倒れ、この世を去った伝説の守護神、津田恒実の背番号を背負う彼は、性格は違えど気持ちのこもった投球と人柄で「14にふさわしい」と愛されてきました。
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優しいから強くなる。強いから優しくなる。藤浪晋太郎にみせた大瀬良大地の真骨頂
今シーズンの阪神タイガース戦で、彼の人柄や生き様を象徴するアクシデントが起こりました。
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これこそ大瀬良大地の真骨頂。彼は、強さがなければ通用しない本物の優しさを宿しています。そこに「自分を良く見せよう」などの打算はいっさいありません。
後に「笑顔をみせたのはいけなかった」と反省していますが、反省は無用でしょう。「隙をみせるな!闘いに水を差す!」と責めるチームメイトはひとりもいないし、それで崩れる脆いチームなら日本一になど程遠いのだから。
それに、「野球がうまければ許される。己の競技で頂点を極めればそれでいい」などというスポーツバカの愚か者を、世界はなにひとつ評価しない。そう、彼は時代にもっとも評価される選手です。
本物の強さと優しさをもつ人間にのみ許された領域。それが彼が存在するステージです。彼は自分自身のみならず多くの人を幸せにしてきました。
カープファン以前に野球好きとして個人的に心配している、環境面を原因とした絶不調にあえぐ藤浪晋太郎選手の復活とともに、現14番のさらなる飛躍を祈りつつ。「大瀬良大地」の真実を解き明かす記事をどうぞ。
【日本経済新聞】広島・大瀬良 救援での傷心糧に4年目の飛躍
先発に復帰した広島・大瀬良大地(26)が、大器の本領を発揮し始めた。おおらかな人柄が、投球の詰めの甘さにつながっていたようにもみえたが、今季は違う。2年にわたる中継ぎでの試練が生きたのだろうか。
九州共立大時代に日本代表に選ばれ、アマチュア球界屈指の右腕として2013年のドラフトでは広島のほかヤクルト、阪神が1位指名。その声価に違わず、14年、1完封を含む10勝(8敗)を挙げて新人王に輝いた。
だが、15年、16年はともに3勝どまり。不幸だったのは15年シーズンの序盤だった。先発でスタートしながら、開幕から9試合で1勝6敗とつまずいた。9回1失点での完投負けなどもあり、決して出来が悪かったわけではない。だが、勝ち星が伸びないとどうしても投手はへたってくる。交流戦の途中に中継ぎへの配置転換となり、これ以降、先発をすることは一度もなかった。
昨季も先発は1度だけ。登板自体が17試合にとどまった。2軍暮らしも味わった。そもそも、大瀬良の資質、投手としての器からすると、少々勝ち星に恵まれなくても、先発一本で育てるべきでは、と思われた。首脳陣の判断には首をかしげざるをえないものがあった。
引用:日本経済新聞
敗戦の責、1人で負い
この救援の体験は大きな傷を残した。15年のシーズン最終戦、クライマックスシリーズ(CS)進出をかけた中日との大一番で、0―0で迎えた八回に登板し、3失点で敗戦投手になった。七回まで無失点の前田健太(現ドジャース)の好投を無にし、大瀬良はベンチで涙を流した。この黒星でチームは阪神に0.5ゲーム差及ばず4位となり、CS進出を逃したのだった。
その責任を一身に背負ったかのようだった大瀬良。最終的に69勝71敗3引き分けと負け越しに終わったシーズン、しかも、どちらかというと貧打で負けることが多かった1年のなかで、救援投手が責めを負うべき理由はなかった。しかし当然ながら、大瀬良の立場ではそういう考え方ができるはずもなかった。
当人しかわからないことではあるが、16年の不振も身体的、技術的な問題というよりは心理的な負傷の影響の方が大きかったのではないか、とも思われる。
投手陣の柱だった黒田博樹の引退もあり、今季は当初から先発一本で行くことが早い段階で決まった。といっても、そこは一からの競争だ。
引用:日本経済新聞
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キャンプ初日に見えた今季への決意
キャンプ初日の2月1日、並々ならぬ決意を感じさせる大瀬良の姿がブルペンにあった。50~60球で終わろうと思っていたという投球にどんどん熱が入り、115球に達した。
「投げすぎですね。あそこまで投げるつもりはなかったけれど、バランスが崩れていたのでカーブを投げたりして、調整した」と話した。
「僕はアピールして(先発の座を)勝ち取っていかなければならない立場なので」。昨季、リーグ優勝したチームの輪に入り切れたとはいえなかった。その悔しさが伝わってくるキャンプのスタートだった。
振り返って考えると、中継ぎへのポジション変更は無駄ではなかったのかもしれない。
6月25日、2位阪神を5ゲーム差に突き放した7回無失点の好投は粘りの勝利だった。
8安打を打たれ、再三ピンチを招いたが、五回2死二、三塁、七回2死一、二塁をしのぐ。「粘って(7回を)投げ切れたのは収穫だし、自信になるだろう。いい球の確率が上がっている」と緒方孝市監督も、4年目の変化を感じ取ったようだった。ここまで、負けなしの5勝。チームの貯金作りに貢献している。
試合中は得点差を考えず、何点まではやっていいという計算はしないようにしているという。「僕はそういうふうに考えるとダメなタイプらしいんで、(どんな点差でも)1点もやらないつもりで投げないと」
気持ちの上げ下げができるほど器用ではないと自覚し、内心としては常に全力投球。これは1回、2回という短いイニングを一分のすきもみせずに抑えなくてはいけない、中継ぎでの体験で得たものなのかもしれない。
大器と呼ぶにふさわしいおおらかさはそのままに「1点」への執着心がより強まったようにもみえる。ほろ苦い経験も、醸造酒のタネのように大瀬良のなかでじわじわと発酵し、先発投手としての成熟を促しているのではないか。エースになれるか、候補で終わるか。大事な1年になりそうだ。
引用:日本経済新聞
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【NumberWeb】優しい人間は生き残れない世界で。広島・大瀬良大地が求める強さの形。
イニング途中で交代が告げられても、広島大瀬良大地はマウンドを降りようとはしない。
交代に抗議の意志を示しているのではない。自分への怒りというわけでもない。
理由は、代わりに登板する中継ぎ投手に声をかけるためだ。
7月18日、甲子園での阪神戦がそうだった。9点の大量援護をもらい、7回まで3安打投球。だが、8回に2四球などで満塁とし、押し出し死球で失点をした直後に交代を告げられた。点差や球質を考えると厳しい継投の判断。自他への怒りで足早にベンチに引き上げても不思議ではないが、大瀬良はリリーフカーに乗る2番手・中崎翔太がマウンドに来るまで待った。
「ごめん。頼んだ」
そう言ってマウンドを降りる。
大瀬良という選手はそういう投手なのだ。
引用:NumberWeb
「優しい人間は生き残れない」と言う人もいるが……。
その日だけじゃない。降板しても、ベンチの最前列で声を張り上げる。好投しても、不甲斐ない投球であったとしても、仲間に声援を送る。たとえ中継ぎが逆転を許して自分の勝ち星が消えても、ベンチに戻る中継ぎを最前列で出迎え、労をねぎらう。
勝負の世界では「優しい人間は生き残れない」とよく言われる。もちろん、プロ野球の世界も同じだ。
高いレベルの中の競争を勝ち抜くためには、優しさが隙を生み、弱さとなることもある。大瀬良自身、プロ入りしてから何度もそう言われてきた。
でも、大瀬良は優しい。
球宴期間中に与えられた2日間の休養日のうち1日は、後輩のために使った。開幕ローテ入りしながら、左ひじ痛でリハビリを続けるドラフト3位左腕・床田寛樹のもとを訪れるためだった。
引用:NumberWeb
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苦しんでいる人を、どうしても放っておけない性分。
床田は左ひじの状態が思うように上がらず、焦りや不安が募る日々を過ごしていた。
一進一退のリハビリは精神的な負担も大きい。6月には「心が折れそう」と話していた、その新人左腕と昨年の自分が重なった。
「僕も昨年そうだったから分かるんです。思うように上がって来ない時期が長くてしんどかった。そのとき僕の場合は自分に合ったストレッチというか、マッサージ法があったので、床田に合えばと……」
苦しんでいる仲間、悩んでいる後輩のためにいてもたってもいられなかった。
休日を使ったのはチームメートのためだけではなかった。
昨年4月には、休日を利用して地震からの復興を目指す熊本に足を運び、水や缶詰などの食料品を届けた。地元・長崎と同じ九州で起きた被害に、いてもたってもいられなかったという。
大瀬良という人間はそんな人間だ。
引用:NumberWeb
普段は優しい。マウンド上でもやっぱり優しい。
もちろん広島ファンにも優しい。
年明けの大野練習場では門の前で待つファン全員にサインしていた。長い列を2周するファンがいても、嫌な顔ひとつしない。寒い中、ファンの「あけましておめでとうございます」という新年のあいさつに、「あけましておめでとうございます」と返しただけでなく、「今年も応援よろしくお願いします!」と続けた。
普段優しい性格でも、戦いの舞台であるグラウンドに立てば表情が一変する選手は多い。だが、大瀬良はマウンド上でも柔和な表情に見える。時折、笑顔も見られる。
そんな姿に「厳しさが足りない」、「もっと戦う気持ちを前面に出せ」などと厳しい声が聞かれる。
引用:NumberWeb
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役目を果たすため……スタイルを貫く覚悟を決めた。
一昨年、米大リーグから広島に復帰した黒田博樹にも言われたことがある。「プロの世界は生きるか死ぬかくらいの覚悟でやらないと、相手に勝てない」と――。
先発から中継ぎに転向したシーズン。意識はした。実際にマウンドでの表情も厳しくなった。
だが、常に“意識”してしまっている自分がいた。“無意識”にはできなかった。
今季、再び先発として長いイニングを求められる。瞬発力勝負の中継ぎと違い、持久力が求められる先発では、「(無理しても)保たないんじゃないかなと思う」と自分のスタイルを貫くことを決めた。
だが、それは決して周囲の言葉に目を背けているわけではない。
「いろいろ言われるけど、自分が初めてになればいいんじゃないかって」
自分がそういう投手ということを受け入れ、その上で強くなる。器用なタイプではないが、胸に秘めたものは強い。
それは、伝説の投手の背番号を引き継ぐ者の使命なのかもしれない。
引用:NumberWeb
“炎のストッパー”津田恒実氏の背番号を受け継いで……。
広島の背番号14と言えば、“炎のストッパー”と呼ばれた故・津田恒実氏が背負っていた番号だ。大瀬良の優しさとは対照的に、打者に立ち向かっていく闘志を前面に押し出す投手だった。
大瀬良はオフになれば、津田氏が眠る山口県周南市にある墓へ足を運ぶ。
登板後は、心の中で偉大な先輩と対話するように、その日の投球を反省する。そして前を向く。
その気持ちが――他の人たちにも伝わる。
引用:NumberWeb
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大瀬良のひと言は、皆に大きな力と勇気を与えている。
7月18日、甲子園。バトンを受けた中崎は「イニングの途中からマウンドに上がることはどうも思わない」と中継ぎとしてのプライドをのぞかせながらも「逆にイニング途中に降りるときは申し訳ないと僕も思う。(大瀬良が声をかけるように)そういうことを言ってくれると、こっちも抑えてやろうという気持ちになる」と続けた。
大瀬良の優しさは、誰かの力になっている。
新人床田も復帰へ前を向いて歩き出し、大瀬良の姿を見て勇気をもらったファンも少なくない。
その優しさは、何より大瀬良自身を強くしているのだ。
優しさと厳しさは相反するものかもしれないが、優しさと強さは同居できる。本物の強さは、優しさの中にこそあるのだ。
引用:NumberWeb
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