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「劇的勝利」
この試合に対しそれを用いずして、一体どんな試合にこの言葉が使えるというのだろう。
閃光のように訪れたあの瞬間が脳裏に浮かぶたび、押し寄せる感情の波に涙がこぼれてくる。きっと一生忘れない、忘れられない。これほどの濃密な時間を共に闘える幸せ。
それは、どんなチームであっても、時として祈る気持ち、時として我を忘れ叫ぶ情熱をも宿しながら愛するひとであれば、誰もがその身で、その心で、瞬く間に分かちあえるシンパシー。
ボルシア・ドルトムント。文字通り「劇的勝利」を掴みとった昨夜のヴォルフスブルク戦。天下分け目で勝ち名乗りをたぐり寄せたのは、香川真司とドルトムントチーム全員による総力の結集。
バイエルン・ミュンヘン戦、ハンブルガーSV戦で露呈した脆さを、決して「ボルシア・ドルトムントらしさ」は失わず、進化し昇華させ「チームの成長」という答えをもってリベンジを果たした瞬間です。
【映像&ゲキサカ】失点直後の劇的決勝点…途中出場の香川が後半ATに3戦ぶり今季4ゴール目
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ひとの生き様にも似た揺らめきと煌めきが存在した一戦。現実を闘い続けたドルトムント
フットボールの怖さと同時に、底力を見せつけた形になったヴォルフスブルク戦。双方一歩も引かず譲らず、危うさすら覚えるピリピリとした現実の中、闘い続けたボルシア・ドルトムントをわたしは愛しています。
結果だけでつづるのであれば、マルコ・ロイスの先制点により1-0で進行し、後半アディショナルタイムにPKで同点に追いつかれたにも関わらず、そのわずか数分後、香川真司のゴールにより逆転。
されど、結果だけでつづってしまうにはあまりにもおこがましい、ひとの生き様にも似た揺らめきと煌めきが存在した一戦。
この先、振り返ったとき、「間違いなくあれがターニングポイントだった」と、思い至るときが訪れるかもしれない。それほどまでに、たいせつな一戦、貴重な時間でした。
マルコ・ロイスと香川真司のゴールは「ボルシア・ドルトムントらしさ」のひとつ
前節、好調とはいえなかったマルコ・ロイス、香川真司が、それぞれ値千金のゴールをあげたということも、「ボルシア・ドルトムントらしさ」のひとつ。
各々で鍛錬し、今日、そのときがベストの自分で臨めるよう磨きあげている前提で、「ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために」。
補いあい、支えあい、導きあい。誰もがお互いに、誰もがすべて、共感するかのように在り続ける。
それはつまり、フットボールがチームスポーツである真実にあらためて気づかせてくれる、ということ。しかも、崇高ながらも優しい暖かさを伴いながら。
これこそ、他チームには存在せず、ボルシア・ドルトムントに存在するモノ。誰になにを言われようが、「ボルシア・ドルトムントが世界一だ」と高らかに宣言し続ける、「Echte Leibe(真実の愛)」の誇り。
攻撃陣が揃ってイメージを共有している凄み。誰もが同じ絵を描きながらフィナーレに向かう
あらためて感服させられたのは、攻撃陣が揃ってイメージを共有している凄み。
たとえば、先制点をあげたマルコ・ロイスのゴール、決勝点となった香川真司のゴール。
あの瞬間、誰もが同じ絵を描きながらフィナーレに向かっていたこと。それが、ボルシア・ドルトムントのブレない強さであり、矛盾するかの儚いまでの美しさ。
とりわけ、ラストプレイとなった、ピシュチェク・ムヒタリアン・香川の、すべてワンタッチ・ダイレクトでつないだ鮮やかな共演。
「事実は小説より奇なり」
ボルシア・ドルトムントは、昨夜も変わることなく、それを証明しました。確かな現実のもとに。
ボルシア・ドルトムントを愛するすべての胸に去来した想い。覚悟を決めた人間に許された特権
知らず知らずのうちにあげた絶叫と共に涙が止まらなくなったのは、本当に本当に久しぶりのこと。
しばらくして、「ありがとう」と。心から「ありがとう」という想いを、なんだか驚いてしまうくらいごくごく自然と抱かせてくれた、高揚感と安堵感と幸福感に包まれた不思議なひととき。
ボルシア・ドルトムントを愛するすべての胸に去来した想いは、共に走り続ける確固たる覚悟を決めた人間に許された特権かもしれません。
「幸せってこういうことをいうんだ」「なんて幸せなんだろう」と。幾度も幾度もこぼれてくる言葉を発する自分自身に照れてしまうほど。さっきまで止まらなかった歓喜の涙が笑顔に昇華した瞬間。
美しい時間を過ごさせてくれて、本当にありがとう。ボルシア・ドルトムントの気持ちいい勝利は、やっぱりわたしの幸せです。