記事内に商品プロモーションを含む場合があります
内田篤人話題が続くのは、内田ファンによる「内田ブログ化計画」などという恐ろしい……あ、いやいや……おもしろいリクエストが多いことも多少ありますが、わたし自身、現役選手の中で内田篤人・香川真司両選手が他選手よりファン度が高いから。
とはいえ、いろいろな選手の人となりや素晴らしさを紹介したい(でもやっぱり内田・香川&シャルケ・ドルトムントは多くなります。本人たちもチームも昔から好きなんで・笑)。
なのに、今日も内田篤人です。「これは書かなかったらウソだろう」というニュースが入ってきていたから。内田篤人をよく知らないひと、または「内田篤人って顔がいいサッカー選手でしょ?」という印象しかないひとにこそ、よかったら知っていただければ。
【SOCCER DIGEST Web】「しょうがない」に込められた、内田篤人のやりきれなさ
もう、ごまかしきれないところまで来ていた。
チャンピオンズ・リーグ(以下CL)の試合後、内田篤人は敗退した後でも饒舌に語る。
それは3月10日のCL決勝トーナメント1回戦、レアル・マドリー戦でも同様だった。彼は25分間も、報道陣の取材に対応したのだ。
しかし、この日内田が話した内容は、これまでの試合後とはまったく違った。81分からのわずか10分間の出場に止まった理由が、話の主なテーマとなったからだ。
「日曜日の練習後に監督と話をした。『コンディションは100パーセントか?』と訊かれたから、『100じゃない』と答えた。自分でもどうしようかと迷ったけど、もうごまかしきれないところにまで来ていたから」
昨夏のブラジル・ワールドカップ後に発覚した右の膝蓋腱の炎症。もともとは昨年2月に右太ももを痛めたことで、膝に悪影響が出たものだ。結局2014-15シーズンの開幕には間に合わず、9月下旬に復帰。その後は出場を続けたが状態は思わしくなく、今年1月のアジアカップのメンバーに招集されるも、辞退して休養に努めた。
ウインターブレイク明け後のブンデスリーガでも試合出場を続けたが、右ひざのテーピングは欠かせない状況だった。2月21日には左太ももを痛めて欠場。続くドルトムント戦にフル出場も、3月7日のホッフェンハイム戦はベンチスタート。だが、35分から途中出場している。
その試合の翌日に、監督との話し合いが行なわれた。
「練習後、座っていたら監督が来て、『最近あんまり走れていないな』って言われた。監督がスタッフに『内田は足を引きずっているようだけど、問題はないのか?』って訊いているのも見ていたしね」
もう隠し切れないと悟ったのだろう。
「俺は『100じゃないけど(今季は)あと2か月だからなんとかする』と言ったけど、監督は『2か月は長いんだぞ』って。確かに残り10試合あるのかって考えると、大変だなという気持ちもある。痛みはもうしょうがないけど、動かなくなってくるのは困る」
指揮官に「出場時間を減らしながらでもメンバーに残ってほしい」と言われる選手に――。
どんなに疲れが溜まっていようとも、どんなに痛みがあっても、「『大丈夫か?』って訊かれたら、俺は『大丈夫です!』と言ってしまうタイプ」と自身を分析していた内田が、初めてコンディション不良を認めた。
「若い頃は平気だったのにねぇ。(無理が)できなくなったのかも」と、少し寂しそうに笑う。思えばシャルケ加入1年目から、「お前はどうしてそんなに頑張り続けるのか? 休むことも大事なんだぞ」とドイツ人スタッフに言われ続けてきたが、そうやって頑張ることでポジションを守り、キャリアを積み重ねてきた。
そして今、指揮官に「長期間離脱されては困るから、出場時間を減らしながらでもメンバーとして残ってほしい」と言われる選手になったのだ。
敵地でR・マドリーに4-3と勝利し、昨季王者を追いつめたものの、あと1点が足りずに今季のCLもラウンド16での敗退となった。
「レアルは開始から守備が上手くいっていない感じはあったね。でも、やっぱりみんな上手いし、結局勝っているのはレアルだからね。そういうチームってやっぱり凄いよね。なんだかんだ勝つ。上へ進んだのはレアルだから」
「サッカーはやってみないと分からない」というのは内田の口癖だ。だがレアル然り、チェルシー然り、4年前に戦ったマンチェスター・ユナイテッド然り、約束されたように勝利を掴むチームは存在する。
わずか1点、されど1点。ゴール数には換算できない違いや差を肌で感じ、そういう相手をどうにか下したいという欲が生まれるのも、CLの舞台に立ったが故だ。
「これをここで止めたら、ダメだと思うんだよね。来年(CLに)出るためにも、土曜日の試合がけっこう大事だと思う」
これから1試合も出ないなら出ないで、しょうがない。
来季のCL本選出場権を掴めるのは、ブンデスリーガの1位から3位。4位はプレーオフに回る。24節終了時点で、3位のボルシアMGから6位のアウクスブルクまでの4チームが、勝点差3の中で競り合っているのだ。現在5位のシャルケにとって、右SBの一番手である内田の完全離脱は避けなければならない。
「今、チームは良い感じだし、俺のコンディションは別にして、俺がいなくてもこのメンバーで問題はないと思う。でも監督は、なんとか2か月持たせたいという感じの雰囲気で話していたから。これから(自分の)出場時間が短くなっていくと思うけど、こうやってちょっとずつ出してもらえればプツンと切れないから。ありがたいと言えばありがたいし、これから1試合も出ないなら出ないで、しょうがない」
この夜、内田は「しょうがない」と何度も口にした。この言葉でしか、気持ちを整理できないのだろう。
「CLが終わっちゃうと、あぁ終わっちゃったなぁという気持ちに、毎年なる。やっぱり出たかったね、90分。まあ、しょうがないんだけど」
やりきれない想いを振り払うように、「しょうがない」と繰り返しても、やっぱり、やりきれない想いは残る。そして、そういう感情との付き合いは、これからもずっと続くに違いない。膝の痛みを感じるたびに、なにかを後悔しても始まらない。
アスリートにとって、膝や腰などは、一度痛めてしまうと完治が難しいと言われる。痛みが和らぎ、気持ち良くプレーできる日もあれば、そうじゃない日もある。負傷した身体といかに付き合っていくか――という経験をしているアスリートは少なくない。
「治らないと言われたから、治らないんだけど。そんなことを言ってもしょうがないから、やり続けるしかない。変わらずに毎日、しっかり準備して、練習をちゃんとやって、試合をちゃんとやって。その繰り返しだと思う。
今日、10分しか(試合に)出られなかったのもしょうがない。なにも話をしてくれない監督もいるけど、(ディ・マッテオ監督は)俺の意見まで聞いてくれたし、向こうの意見も言ってくれて。それで俺は納得しているから。あとは自分でコンディションを上げていくしかない。俺の身体の問題だから」
これまでと同じように、内田篤人はまた一歩、前に歩みを進める。そうやって切り拓き、乗り越えてきた。それが彼のキャリアの礎だから。
今日、精一杯の力を尽くす。そうやって辿り着いたのがCLの舞台。その魅力を知っているからこそ、歩みを止めることはできないはずだ。
内田篤人というフットボーラーを見届ける
ひとりの内田ファンとして、僭越ながら個人的な意見を書かせていただきます。
いつもギリギリの限界以上までがんばっているひとに「がんばれ」とは言いません。
いつも熱い想いを秘めながら走り続けているひとに「走って」とは言いません。
いつも無理が当たり前で止まることを恐れるように動き続けるひとに「休んで」とは言いません。
ただ、これから先、どんな結果になろうと、どんな状態になろうと、内田篤人という素晴らしいフットボーラーを目をそらさず見届ける、ということを心に決めています。なにがあってもブレることはない、ということ。
「なぜそんなになるまで無理をした?」は内田篤人に対して愚問でしかない
試合出場時間が減る可能性が高くなったことで一番悔しい想いをしているのは、他ならぬ本人であることは真っ当な人間なら誰しも思いいたること。
「なぜそんなになるまで無理をしたの?」などの問いかけは、内田篤人に対して愚問でしかありません。
内田選手が「自分がフットボーラーとして生きるための自分なりの答え」として、その都度、選択をしながら走ってきたその結果に対し、「なぜ?」なんて無粋で失礼極まりない、どこか否定するような言葉を投げかける気も、想いを持つ気もわたしにはありません。
そしてそれは、フットボーラーとしての内田篤人を応援してきた人間なら、きっと誰しもそうじゃないかな、と。
内田篤人という人間の価値はなにひとつ変わることがない
内田選手には、どうか胸に留めておいていただきたいと願います。たとえば、もしも、今日、今このとき、引退ということになったとしても、内田篤人という人間の価値はなにひとつ変わることがないという真実。
[blogcard url=’https://blueazure.jp/sacchi/sports/fifa-football-soccer-japan-national-team-atsuto-uchida-fc-schalke04/6758/’ width=” height=’150px’ class=” style=”]
顔がいい?イケメン?ルックス最高?スタイル抜群?
そんなことはどーでもいい。申し訳ないくらいに、心底どーでもいい。
メイクされて、衣装を着て、メディアに登場する内田篤人を目にするたびに「……なんか違う(笑)」と良いイミでほくそ笑むわたしにとって、そして“フットボーラー内田篤人”を愛するすべてのひとたちにとって、プレイヤーとしての凛とした姿、それだけで言葉が必要ないくらい美しいということ。
すべてが内田篤人で、すべてが正解
思い悩む姿も、元気いっぱい笑う姿も、すべてが内田篤人で、すべてが正解です。
なにを想おうが、どうしようが、誰かに危害を加えたり惨めな想いをさせるような類いでなければ(そして迷走に溺れる頭の悪い人物ではない)、思うままに自由に選択し、思うままに生きていってほしい。
その背中を、わずかながらでもそっとやさしく押す、時に支えるようにすべてを見守るひとえの連なりが、わたしたちファンです。
少しでも痛みが消え、傷が癒えるように、と。願いつつ、幸運を祈ります。これから先の道も、どうか幸多くありますように。