闘うサイドバック・長友佑都|苦境でも走り楽しむことを諦めない天性の韋駄天

イタリアセリエA・インテル所属、長友佑都。ドイツブンデスリーガ・シャルケ所属、内田篤人。

すでに何度かピックアップしてご紹介してきた、日本代表が誇る屈指のサイドバックコンビ。現在、それぞれ立場や状況は違えど、彼らは光を求めて苦闘の日々を送っています。

そんな中、長友・内田両選手本人の真実の姿と声が届けられました。いずれも見応えのある素晴らしいインタビューです。これを世に届けてくださった担当記者さんにリスペクトを表します。

今、彼らは、なにを考え、なにを見つめ、なにを想うのか。どんな状況でも諦めない。ある時は淡々と、ある時は負けん気の強さを隠さず。

心が震わされ涙がこぼれそうになるほど、静かな情熱を宿す彼らの真実の声。まずは長友佑都編からご紹介します。内田篤人編はコチラから。

闘うサイドバック・内田篤人|何度でも這い上がり前進を続ける誰よりも屈強な魂

【サッカーキングオピニオン】誇り高きジョカトーレ、長友佑都

9月下旬にインテルの練習場で長友佑都選手に話を聞いた。

取材に訪れた時、インテルは開幕から5連勝を飾り、セリエAの首位に立っていた。一方で、長友選手は第2節のカルピ戦に途中出場して以来、出場機会がないという状況だった。加えて、夏の移籍マーケット期間中は様々な移籍の憶測が飛び交ったことも記憶に新しい。

日本で目にする長友選手に関するニュースは、「出場機会を与えられないでいる気の毒な選手」といったトーンのものが多く、ポジティブなニュースは長く目にしていなかった。そんなタイミングでのインタビューだった。

イタリア人カメラマンのファビオの運転で、ミラノ市内からコモにあるインテルの練習場、通称“ピネティーナ”に向かう車中でも不安は募るばかり。明るくポジティブな性格の長友選手でも、このタイミングでのインタビューは気が進まないに違いないと憶測していた。

日本のファンのみなさんに現在の長友選手の生の声を届けたいという気持ちと、この難しい時期にインタビューを受けてもらうのが申し訳ないという気持ちを抱えたまま、ピネティーナに到着。

インテルの練習は原則として非公開だが、この日はクラブスタッフの計らいで特別に練習の一部を見ることができた。雲ひとつない快晴だったが、練習が16時スタートだったこともあり、練習を見学させてもらう頃には少し日が傾き始めていた。

優しいオレンジ色の光に包まれた芝の上に軽快な動きを見せる長友選手の姿があった。そして、先ほどまでの「勝手な心配」は杞憂だったことをすぐに思い知らされる。

フィジカルトレーニングをこなす様子を見ればコンディションの良さは一目瞭然で、練習の最後に行われた「鳥かご」(パス練習)では、リラックスした雰囲気の中で、一番大きな声でパスの数をカウントして場を盛り上げていたのも長友選手だったのだ。誰よりも全力で、誰よりも楽しそうに練習に取り組んでいた。

全体練習が終了したのを見届けてクラブハウスに戻る。しばらくして、他の選手は私服に着替えて帰途につき始めているのに、長友選手は一向に現れない。長友選手を待つ私たちのもとに、クラブスタッフが「ユウトはまだ練習しているよ」と伝えに来てくれた。

練習熱心な長友選手のこと。居残り練習をしていても不思議ではなかったが、再び向かった練習場で目にした光景は想像だにしないものだった。数人が残っていたピッチで長友選手の相手をしているのは、チームメートではなく、ロベルト・マンチーニ監督だったのだ。

しかも、緊張感のある全体練習の時とは全く異なり、笑顔と楽しそうな声が響き渡っている。長友選手のクロスに中央で合わせる監督が、「ユウト、もう終わろう!」と言うが、「10本(監督が決める)まで!」と、長友選手が冗談交じりに指示を出す。

試合での出場機会が減少しているのは事実だが、居残り練習でのやり取りを見る限りでは、監督とも良好な関係を築いているようだった。

実際に、インタビューに応じてくれた際も長友選手の表情は明るく、語られた言葉の数々はポジティブなトーンで彩られていた。

「ここ(インテル)は自分にとっての“家”」と話す長友選手だが、冬の移籍マーケットがクローズした時にミラノにいるかは分からない。

だが、秋の気配が漂い始めたピネティーナで確信したのは、「ユウト」が監督やチームメートはもちろん、クラブスタッフの誰からも愛されている偉大な選手であることに変わりないということだ。

監督が、「彼のことは好きだよ。この夏に移籍が噂された時には、正直『出て行ってほしくない』と思っていた」と語れば、同じサイドバックのポジションを争うダヴィデ・サントンは、「誰に対しても明るく、常に周囲を笑わせている。それでいて練習では1000パーセント……いや、2000パーセントと言っていいほど全力で取り組んでいる」と、長友選手への称賛の言葉は尽きない。

もちろん、ピッチで躍動する長友選手を見たいのが正直な気持ちだが、出場機会が減少していてもなお、率先してチームを盛り上げ、自らも前を向いて努力を続けるその姿は頼もしく、力強さに溢れていた。

「僕は今いる場所で輝くための努力をするだけ。やるべきことはどこにいても変わりません」

誇り高きジョカトーレはこうしている今も、まっすぐに前を見据えて日々のトレーニングに取り組んでいる。

引用:サッカーキングオピニオン