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スカウト・コーチ・監督ときたところで、今回は広島カープの経営陣を代表し、松田元オーナーの球団運営と育成方針をご紹介します。
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経営戦略や選手評価などにおいて批判されることも多いオーナーですが、個人的に酷いオーナーだと感じたことはありません。「ファン目線を忘れない」「大風呂敷を広げない」など堅実な球団運営は真っ当そのもの。
確かに、監督・コーチ陣まで生え抜きにこだわりすぎるなど疑問はあるとはいえ、石井琢朗の抜擢をはじめ経営サイドも変わってきているし、常に現場至上主義を掲げ、ファンに愛されるチームを作っている。
その象徴が、柄が悪く野次を飛ばす観戦スタイルのおっさんが中心だった球場から、野球をこよなく愛するおじさんはもちろん、家族連れから女性、外国人まで安心して足を運んで楽しめるスタジアムへの改革。
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MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島を擁する球団であることがどれだけ誇らしいか。そこで躍動する選手たちがどれほど美しいか。
「言うは易く行うは難し」。揚げ足取りのみがクセづいたファン(もどき)、そして口さがない経営者にこそぜひ読んでいただきたい記事をどうぞ。
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INDEX
【スポーツ報知】松田オーナーが語る カープの強さ
(上)選手は育てるもの「使う勇気、我慢する勇気が広島にはある」
広島が2年連続でセ・リーグを制し、改めてチーム強化方針が評価される形となった。カープはなぜ強いのか。ひもとくと15年連続Bクラスの時代からぶれていない松田元オーナー(66)の独自理論があった。
黒田が引退しても、14勝の薮田、12勝の岡田ら若手投手が台頭し、穴を埋めた。松田オーナーは育成を重視したドラフトにおける独自戦略が実ったものだとみる。
「人が見ていないときに見ていると思うんだ、スカウトがね…」
例えば2014年ドラフト2位で指名した薮田は、直球は150キロを超えたが、亜大では右肘を疲労骨折するなど、リーグ戦登板は3年春の2試合だけで通算0勝。実績はほとんどなかった。10年ドラフト6位でリリーフの要、中崎もスカウトの努力の結晶だった。
「現場の使う勇気、我慢する勇気が広島にはある。我慢しないと使えない。薮田なんか、そういう部分がある。薮田は下の順位で取れたかもしれないけれど、(素材がいいので)早い順位で取った。中崎なんか、あの時は無観客試合があって、他球団は誰も見に行ってないんだけど、こっそり見に行って陰で見ている。こっそり撮ったビデオをわしらに見せている」
10年は宮崎県で口蹄(こうてい)疫が流行。感染拡大防止対策が取られ、スカウトでさえ県内の出入りが難しいなか、担当の田村スカウトが粘り強く中崎を発掘した。
「よそのスカウトはみんなで行くけど、カープは個々で動くケースが多い。結構みんなそれぞれ、目標を持って動いている。可能性のある選手を見つける確率は、高くなっているんだと思う」
オコエ(楽天)、小笠原(中日)、高橋(ソフトバンク)ら高校生に注目度の高い逸材がそろった15年のドラフトでは、全国的な知名度や実績はなくても潜在能力を見抜き、早くから鞘師スカウトがマークしていた大商大・岡田からの方針転換はなかった。
逆指名ドラフトで苦しんだ時代もあった。それでも「選手は育てるもの」という不動のポリシーを貫き、FA補強に否定的なスタンスを取った広島が、ドラフト指名で重視するのは投手なら〈1〉球速、〈2〉高身長、そして〈3〉人間性だという。素材としての評価はもちろん、「人間性」は松田オーナーがキーワードとしてよく用いる。チームのムードに一体感があるように見えるのは、この人間性が関係しているようだ。松田オーナーは4番に成長した鈴木の、あるエピソードを披露した。(特別取材班)
引用:スポーツ報知
(中)人間性も素晴らしい誠也にリーダーシップ期待
昨季の「神ってる」大ブレイクから、4番でチームの顔になった今季の鈴木の急激な成長を、松田オーナーも驚く。強打、強肩、素質もさることながら、鈴木の人間性にも着目する。あるとき、オーナーの顔を見てあいさつを怠った若手選手がいた。
「(オーナーの)顔を忘れている。それを見て誠也が、また連れてきてあいさつをさせた。そういうところもある。まずいなと思ったんだろうね。その中で若手は学ぶわけだ。そういう選手同士、先輩が後輩に教えていくというのが、うちの伝統の部分じゃないかと思う」
人間性―。例えば練習嫌いであったり、周囲に悪影響を及ぼすような言動のある選手は獲得リストに入れないという。スカウトは視察に出向くとき、チームメート、監督、コーチとの接し方まで注意深く見守る。チームでは道を外れる選手が出ないよう、選手同士で律する空気が流れ、一丸の雰囲気が醸成される。
「いつの間にか最後は性格的にいい子をとってしまう。ちょっとゆがんだ子、悪げな子がいたとしても、入ってしまったら、選手同士の中でいい具合にしつけてくれる」
黒田のいない今年のチームは40歳の大ベテラン新井が、模範となり、いじられ役も引き受ける。ベンチはいい意味で上下関係の縛りがなく、アットホームな雰囲気が若手も活躍する好循環となっている。
「見ていると楽しそうにやっている。ほかのバッターが打ったらベンチの選手が喜ぶし。あれを好感を持って見ている。楽しそうにやっているのが、やっぱりファンに伝わる。ファンが見ていて、いいなと思うんじゃないのかな」
広島の伝統は、選手を野球漬けにする「猛練習」だといわれる。キャンプでは、主力選手でさえ、日が暮れるまで球場を離れることはない。その姿を若手が目の当たりにし、「練習をしなければ生き延びられない」という意識付けが継承されていく。練習に真摯(しんし)に向き合うことができるかも、重視する人間性のひとつだ。
「今はいじられている。だんだん、いじるような立場になって、彼がどういう行動をするのかだな」
寮では消灯時間を過ぎてもバットを振り続けるというエピソードも持つ誠也のリーダーとしての資質に、松田オーナーは期待する。(特別取材班)
引用:スポーツ報知
(下)外国人調査じっくり3年
V2で黄金期に入ったとされる広島だが、松田オーナーの展望に、課題がないわけではない。
「投手が怖いね。岡田と薮田がしっかりとやってくれているけど、リーダーがいない。野手は新井がいて、丸がいてとバランスがよくて、また菊池が中心となっていろんな形で引っ張って全体的にいい。投手の成熟度でいえば、誰が引っ張っていくかというところでは、まだ落ちるよね。黒田がいないのが大きい。そういう選手が出てきてくれれば、よりいいんだけどな」
リーダーはFA選手で補うこともできるが、球団の揺るがぬ方針で、FA補強はしない。しかし、獲得する外国人選手は「ハズレ」が少ないのも広島の特徴。米留学経験もあるオーナーが、外国人選手を発掘する独特の目を持ち、球団内にその考えが浸透している。
「投手では日本人のような(オーソドックスな)投げ方をするのは取らない。相手が嫌がるような背が高く角度があるタイプが欲しい。そして性格が悪いとダメ。人間性は大事。外国人調査は同じ選手を3年くらい見て、28歳くらいで獲るのがいい」
ジョンソンは昨季沢村賞。また、ソフトバンクの絶対的守護神・サファテも、もとはといえば広島が獲得した。その後、他球団で活躍した選手が多いことで、いかにその目が確かなものかが証明されている。
また、松田オーナーはユニークな発想で、マツダスタジアムの営業的なリーダーシップも発揮している。
「(寝転がりながら観戦できる)寝ソベリアのもとになったのはオランダの図書館か学校かがベースになった。また、来年の企画の仕込みのためにポルトガルの傘祭りなどに担当者を行かせている。イタリーにも行かせている」
かつての本拠地・市民球場は「劣等感を持つような球場。ロッカールームとか、相手に対しても申し訳ないような環境だった」という。全試合満員のマツダスタジアムへたどり着いたのは、チームの運営、補強、営業、すべて理想を追い求めた結果だ。ファンの絶大な支持のもと、今季、マツダでは45勝20敗1分け。根幹にあるのは市民球団としての誇り。
「地域との結びつきは固くないといけないし、我々が地域に対してできることは積極的にやりたいといつも思っている。地域がうちに対してやってくれることは目には見えんけど、みんなが支持しているというものは感じることができるからね」(特別取材班)=おわり=
引用:スポーツ報知