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UEFAチャンピオンズリーグ決勝で今シーズン見事に3冠を飾ったスペイン・リーガエスパニョーラ所属バルセロナ。
近年稀に見る好ゲームを演じた同チームの長い長い歴史の中で、どの選手よりも多くユニフォームを身にまとい活躍したある選手がこの試合をもって退団します。
シャビエル・エルナンデス。
シャビと呼ばれる彼は、アンドレス・イニエスタとともに「バルセロナの心臓」と評される基幹の重責を担い続けてきました。
チームメイトのみならず相手チームからも愛される存在、シャビのお別れ会見が感動モノ。サッカーファン、とりわけバルセロナファンなら誰もが涙なしには見れないほど。
今回はその会見の記事をご紹介します。ぜひ読んでみてください。あらためて「シャビエル・エルナンデス」という存在の凄みに気づくはずです。
【SOCCER DIGEST Web】盟友イニエスタの言葉に涙…シャビ、感動の「お別れ会見」
シャビとイニエスタの間柄がしのばれる感動的なメッセージ。
2015年6月3日――。
シャビがバルセロナの選手として、本拠地カンプ・ノウで最後の記者会見を行なった。
トップチームデビューから17年、116年のクラブ史で誰よりも多くバルサのユニホームを身に纏ってピッチに立った男の最後の姿を見届けようと、多くの人々がこの会見に駆け付けた。
現在のチームメイトはもちろん、カルレス・プジョールやエリック・アビダル、ガブリ、オレゲール・プレサス、アルベルト・ジョルケラ、サンチャゴ・エスケーロといったかつての同僚、さらにヨハン・クライフ、カルレス・レシャック(元監督)、ジョアン・ラポルタ(元会長)、アンヘル・マリア・ビジャール(スペイン・サッカー連盟会長)などのお歴々もズラリと顔を揃えた。
普段のシャビは、ピッチでのプレー同様、とても冷静な人物だ。真面目な印象をもたれがちだが、とても気さくで明るい人柄であり、とはいえ、簡単に周囲の感情に流されるタイプではない。
そんな彼が、堪えきれずに涙をこぼしたのは、盟友アンドレス・イニエスタが別れのメッセージを贈った時だった。
「シャビ、僕のキャプテン、チームメイト、友人」
そう呼びかけると、イニエスタは言葉を紡いでいった。
「トップに辿り着くのは難しい。でもなにより難しいのは、その座を守り続けること。君はまさに、それをやってきたんだ。それも、世界で最も要求の高いバルサというチームで」
「常に自分のことよりも、グループのことを先に考えてくれてありがとう」
「君との16年はあっという間だった」
「君なしで新シーズンのトレーニングを始めるなんて、考えられない。君も同じ気持ちだろう。まさか、この日が来るなんて……」そして、惜別の想いを締めくくる次の言葉に、とうとうシャビは感極まり、涙で潤んだ大きな瞳を両手で拭ったのだった。
「あの誰よりもバルサファンだった君のおじいさんが、もしも、生きていたら、今日の君を見て、きっと誇りに思っただろう」
シャビとイニエスタの間柄がしのばれる、感動的なメッセージだった。
続いて、自身のハイライト映像などをまとめたトリビュートビデオがスクリーンに映し出されると、もはや両手では間に合わず、シャビはハンカチを取り出し、あふれる涙を拭った。
それでもすぐに感情を抑え、スピーチを始めたところは、最後までシャビらしかった。
「感謝するのは、僕のほうだ。僕はとても幸せだ」
そしてシャビは、ユース時代のコーチから始まり、現監督のルイス・エンリケに至るまで、恩師の一人ひとりに感謝を述べていった。
スピーチはカタルーニャ語だったが、亡きルイス・アラゴネス(元スペイン代表監督)にはスペイン語で語りかけた。
「監督、どこにいらしても、監督が僕のためにして下さったことを忘れません。どれだけ感謝してもし尽くせません」
まるでアラゴネスがそこにいるかのようだった。
120人がスタンディングオベーションを贈る
シャビは、幼少の頃から、キャプテンシーがあり、常に集団のために尽力し、チームに問題が起きた時、チームがうまく回っていない時など、必ず、キャプテンとして矢面に立ち、絶対に逃げも隠れもせず、堂々とチームの代表者として仲間を庇ってきた。
どんなにつらい状況でも、正面からまっすぐに相手を見つめ、言い逃れなどしない。バルサのカンテラーノ(ユース出身者)の鑑としてシャビをずっと見つめてきたメディアは、だからこそ、そんなシャビに敬意を払い、スピーチが終わると約120人全員が一斉に立ち上がり、スタンディングオベーションを贈ったのだ。
バルサの選手として最後のスピーチを終えたシャビだが、カンプ・ノウにまた戻ってくると誰もが信じている。シャビ本人が、「これはアディオス(最後のお別れ)ではなく、また、すぐに会おうという挨拶であることを願っている」と話したように。
カタールで新たな一歩を踏み出すシャビの幸運を祈ろう。近いうちにきっと訪れるであろう再会を楽しみにしながら――。