確かに、数式というものは、
日常に於いて直接的な役に立たないのかもしれない。
たとえば、お腹いっぱいになるお米が買えるわけでもない。
たとえば、行きたい場所に連れて行ってくれるわけでもない。
同じように、目に見えない愛というものも、
日常に於いて直接的な役に立たないのかもしれない。
そんなふたつが、
必然的とも呼べる引き合い方で融合された本作。
人間の日々の営みが、どれほどまでに、
形のない、謙虚な存在によって支えられているか、
改めて感じ入るところとなる。
草花のおしゃべり、樹木の歌声に、
ふとした手の温もりや、人のまなざしの温かさ。
そこに、調和を持って語られる、
数式というものの、潔く、凛とした佇まい。
心地よい感度と温度によって紡がれた上質な一品は、
時間までもが、浸り切りたいほど上質。
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