【たてにつむぐいのち】縦に紡ぐ生命／THIS WORD THEME is HIDETOSHI NAKATA／中田英寿
2015/08/16
あの日、わたしの静脈は、虹と出会った。
それは、この先も紡がれ続ける、確かな証。
すべては、あの日から始まった。
画の中に訪れた、とてつもなく大きな衝撃。
息をすることすら忘れさせられ、
それどころか、
時が経つことをも忘れさせられたわたしは、
心地良い痺れと手をつなぎながら、
感覚の温度に導かれるように歩を進めていた。
大いなる草原で見上げたそれは、
画から汲みとっていた感触を恥じ入るほどで。
それまでの自分の道のりを振り返ってみても、
これほど美しいものは、
きっと、間違いなく、出会えた記憶がない、
というほどの存在だった。
自らの強い意志を持って、光を伴いながら軌跡を描く。
道を切り拓くように、縦に、縦に、と。
気づけば、涙が止まらなかった。
鼓動を持った虹は、そう、確かに生命として息づいていた。
こんな出会いは、後にも先にも、もう訪れないだろう。
あの日、わたしの静脈は、虹と出会った。
それは、この先も紡がれ続ける、確かな生命。
そうだ、すべては、あの日から始まったんだ。